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JSOL次世代CAE共同研究講座

メゾスケールの数理モデルを基にしたマルチスケール解析技術を確立します。

研究者インタビューVol.2

執筆者:
JSOL次世代CAE共同研究講座 平島 禎特任教授
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JSOL次世代CAE共同研究講座

目次

  1. 1.先生のご専門について教えてください
  2. 2.どのような研究をされていますか?
  3. 3.この道に進むことになったきっかけを教えてください
  4. 4.共同研究講座・協働研究所の利点
  5. 5.企業が大学内で研究することの意義
  6. 6.この研究で難しいことは?また、研究が進まない時にはどうやって乗り越えますか?
  7. 7.人々に伝えたいこと、メッセージ

先生のご専門について教えてください

新しい電子機能部品,燃料電池などの開発や電子部品実装方法の信頼性評価などに携わりながら,それを実現する設計品質の向上と設計リードタイムの削減を目指した所謂CAE(Computer Aided Engineering)技術の高度化に関わり,CAE技術を利用した多種にわたる受託研究にも従事してきました.固体力学をベースとした数値計算技術,特に有限要素解析を専門としています.

どのような研究をされていますか?

JSOL次世代CAE共同研究講座では,連続体力学に依るマルチスケール解析に取り組んでいます.ミクロンメートルスケールの金属結晶挙動と(ミリ)メートルスケールの製品部材挙動を一つの解析技術でつなげることで,製品部材に起こる特徴的な現象を結晶粒レベルで説明することや,結晶構造から製品部材の特性を予測できる要素技術を確立することを目的に研究を続けています.部材破壊のメカニズム究明や材料特性同定の手段として期待されています.

この道に進むことになったきっかけを教えてください

もともと学会活動や委託研究を通じて大学の先生方とのお付き合いはありましたが,所属企業が企画する会議の基調講演を機械工学科の澁谷陽二先生にお願いしたことをきっかけに,製品設計におけるCAE技術の在り方について先生と議論する機会が増え,より実際的な教育の必要性から「有限要素解析とCAE」という講義を担当させていただいています.その中で、私自身も大学の研究の一端を知ることができ,成熟期を迎えつつあるCAEの長年の懸案事項であるマルチスケール解析の実用化に向け,必要な要素技術を確立すべく,共同研究講座というスキームを利用して先生と共に取り組ませていただくことになりました.

共同研究講座・協働研究所の利点

共同研究講座では,委託研究のように一方的な研究報告形態ではなく,先生と講座メンバーがオープンな環境下で議論をしながら技術課題を解決し,研究を遂行しています.自社の設備のみならず大学の設備も使用し,時には大学院生にも参画いただけることは,技術を深耕する上でも,研究のスピードを上げる上でも大きなメリットとなります.
 また,コロナ禍でコンタクトしづらかった参画企業どうしの交流も活性化されつつあり,大学内の研究室間交流という位置付けでの技術情報の交換により,お互いの技術課題の解決手段に多様性が生まれることにも期待しています.

企業が大学内で研究することの意義

大きな技術課題を一企業のアイデアだけで解決するには当然限界があります.大学との共同研究は多角的な観点からの分析が期待できるだけでなく,先生方の技術の目利きから大学ならではの基礎的なところに立ち返った研究ができるので,技術課題に対してプリミティブにアプローチでき,強い技術が育まれることが期待できます.その道の権威の先生がすぐそこにおられる状況は企業の中では作りだせません.その先生方や大学院生との議論が研究推進のエンジンとなっています.

この研究で難しいことは?また、研究が進まない時にはどうやって乗り越えますか?

結晶粒スケールの挙動を物理的な妥当性に基づいた数理モデルとして構築していますが,それを部材スケールに拡張する解析モデルの確立には幾つかの課題があり,それぞれに知恵が必要で,両スケール(結晶粒スケールと部材スケール)で実験検証をしながら進めているところです.
 研究を進めていく中で当然壁はあり,考え抜くことで解決の道を探るのが基本であるのは間違いありませんが,他者との情報交換の中で解決の糸口が見いだせることもよくあります.その点,共同研究講座はメンターの先生をはじめとする先生方に研究の深さを求め,大学と共同研究をされている企業研究者の方々に研究の幅を求めることができる絶好の環境下にあります.

人々に伝えたいこと、メッセージ

多くの企業の研究者・技術者の方は,競争力のある企業ノウハウ構築のためSomething New技術の獲得に邁進しておられます.解決へのアプローチや解決後のアプリケーションは違えども,同種の課題に直面されている方も多くおられます.
 企業間での技術の囲い込みが根強い日本が諸外国に伍していくには,何らかの方法論での普遍的な技術の共有が不可欠で,我々が取り組んでいるCAE解析計算技術はその観点から企業間の技術的な共通言語となりうる存在であると考えています.各企業が強い技術を獲得し,強い製品を作るために,共通言語を用いて情報交換が出来,それをベースにそれぞれの企業が個々のノウハウを構築することができれば…,それは素晴らしいことだと思います.共同研究講座での活動を通じてそのような取組みも探りたく思いますし,次の世代の方に是非取り組んでいただきたいテーマでもあります.

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メゾスケールの数理モデルを基にしたマルチスケール解析技術を確立します。

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