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パーソル高度バイオDX産業人材育成協働研究所

バイオテクノロジー分野にかかわる人材の能力評価法を確立し、産業人材育成に貢献いたします

パーソル高度バイオDX産業人材育成協働研究所

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パーソル高度バイオDX産業人材育成協働研究所

松繁 寿和先生
高松大学 経営学部 教授 / 大阪大学名誉教授、パーソル高度バイオDX産業人材育成協働研究所 特任教授

  • 1980年 大阪大学経済学部卒業
  • 1988年 オーストラリア国立大学太平洋研究科博士課程修了 (Ph.D. in Economics)
  • 1988年4月 南山大学経済学部助手
  • 1989年4月 南山大学経済学部講師
  • 1994年4月 大阪大学経済学部助教授
  • 1994年7月 大阪大学大学院国際公共政策研究科助教授
  • 2003年4月 大阪大学大学院国際公共政策研究科教授
  • 2009年-2011年 大阪大学大学院国際公共政策研究科 研究科長
  • 2016年-2020年 大阪大学COデザインセンター長
  • 2022年4月 大阪大学名誉教授
  • 2022年4月 高松大学経営学部教授(現在に至る)

パーソル高度バイオDX産業人材育成協働研究所はバイオ人材の能力を可視化し、高度人材育成システムの確立を目指すことを目的に設立された文理融合型の協働研究所です。
松繁先生は技術者の育成や評価システムの構築に関わっておられます。

先生のご専門について教えてください。

労働経済学 経済学の中でも人を扱う学問です。
人間のissueに興味があります。

労働経済学は労働市場の働きを研究し、人々の満足度をどのようにして高めるのかを研究する学問です。
日本は少子高齢化等、労働人口の減少や正社員と非正社員の格差など労働市場が直面する課題がたくさんあり、研究課題も多岐にわたります。その中でも特に教育の経済学、キャリアデザイン、人事統計分析、計量経済学、HRM(Human Resource Management(人的資源管理))の経済学などを専門にしています。

労働経済学の隣接分野として、教育を経済学的に考えていく教育経済学があります。
教育学では就学前の教育も含め、学校卒業までを守備範囲とし、卒業後どのような人生を歩むかには注力していません。
一方、労働経済学は卒業後に労働市場に入ってきた人材を元に議論しますが、その人たちが受けた教育については考慮していません。
本来ならば一貫して考えるべきものが分断されていますが、私は教育学と労働経済学は一本につながっているものとして考えています。

教育水準はその後の労働市場でのパフォーマンスに影響を与えます。特に、就学前や就学後数年間の教育の重要性に着目してきました。
特に非認知能力には注目しています。
非認知能力とは物事に対する姿勢、取り組み方、行動など日常の生活や社会活動においてモチベーションの高さやリーダーシップといった、テストなどで数値化することが難しい内面的なスキルを指します。
個人の人生に大きく影響し、将来の成功につながる能力であるとされ、昨今は非認知能力を高める教育への関心が高まっていますが、私は随分前から注目してきました。
IT化・グローバル化が急速に進むにつれて、社会の課題やニーズも多様化しています。
こうした社会の変容に臨機応変に対応できる人材がこれから先の社会では必要になるため、そのような人材を育成する仕組み作りが必要と感じています。
ただ、非認知能力を高める教育は現状の教育環境のままで実現するのは少し難しいとも思っています。なぜなら現在の入試制度は詰め込み主義、知識偏重の傾向があるため、学校教育もそれに合わせた教育になっているからです。
認知能力だけではなく、非認知能力を高める環境を作るために、学校教育や入試制度の改革が必要と感じていますが、急に変えることはできません。
しかし少しずつでも変えていかないと日本はこのまま諸外国から取り残されて沈んでいくと思っています。


先生は現在パーソル高度バイオDX産業人材育成協働研究所でご活動されていらっしゃいますが、企業が大学内で研究することの意義についてはどのようにお考えでしょうか。

企業は利益を追求するものでありますが、大学での基礎研究も重要で、どちらかだけではこれからの世の中では通用しないのでは、と思っています。大学には様々なデータが蓄積されているのでそれらをもっと活用していきたいですね。大学は研究を行う場ですが、経済社会を支える人材を育てる場でもあります。社会の課題やニーズに対する感度を高め産学の連携・協働を推進していく役割があると思っています。

企業との共同研究について

もっと増えていかないといけないと思っています。日本は欧米に比べて何十年も遅れています。
大学は意識を変えていかなければならないですね。
文系の共同研究講座がもっと増えるといいと思いますが、文系の研究は即利益につながらないと企業に判断されてしまい、なかなか講座を作るところまではいきません。しかし、このような考え方は危険で基礎研究を疎かにすると学術的な知見の開拓が進まなくなってしまいます。このあたりが難しいですね。

研究者を目指す人へ

あの世には何も持っていけません。自分にとって大事なものは何かを見つめてください。死ぬ間際に良い人生だったと思えるかどうか。研究したいテーマはあるかどうか。納得できる人生だったかどうか。
研究者として生きて、やってきたことに価値があったと思えるかどうか、が大切です。
企業に就職する人と比べると、乱暴な言い方になってしまいますが単純に収入の面で大きな差ができます。(卒業後Dr.を取るのに5年、常勤の仕事に着くまでに5年かかったとして、年収500万×10年とすれば生涯年収-5000万。)それを納得できるか、それでも追及したいテーマがあるかどうかを考えてほしいです。

これから取り組みたいこと

女性の雇用問題、高齢者の雇用問題等に取り組んでいきたいと思っています。
少子化へと進む我が国においては、今まで働いていなかった層への働きかけやリカレント教育が重要だと感じています。繰り返しになりますが、社会の仕組みを変革しなければ日本はますます先細りしていくと思っています。
また近年、高校生や大学生が進学先として海外のトップ大学を選ぶ動きが目立つようになってきています。これは卒業後も彼ら彼女らが海外にとどまるならば、国を支えるべき人材の国外流出につながり、日本の社会、経済力の弱体化にも直結します。日本の大学が国際的にも競争力を持ち、魅力を持ち続けるために必要なことは何か、を自分に問いかけています。

パーソル高度バイオDX産業人材育成協働研究所での松繁先生のご活動について、ご一緒に研究所で活動されていらっしゃる皆さまからお話を伺いました。

当協働研究所では、バイオ技術者の能力を「技能」・「知識」・「行動特性」の3要素に分け、それぞれの能力可視化指標を作成しています。
松繁先生には特に「行動特性」の指標づくりにご尽力いただいています。
行動特性とは業務を進める際に見られる特徴的な行動であり、これを数値化して示すことは難しいのですが、松繁先生の深い知識と広いご見識によって指標の形づくりができました。現在は引き続き内容の精査に取り組んでおります。

松繁先生について一言いただけますか?

松繁先生は多くの企業様の人事課題に取り組まれたご経験があり、製造業の技術者に関する知見もお持ちです。
バイオ技術者に関するご研究は今回が初めてとのことですが、労働経済学の視点で的確なアドバイスをいただいております。
様々なことに対して関心をもっていらっしゃる先生との意見交換ではいつも活発な議論が交わされています。


本日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。





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