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コマツみらい建機協働研究所

建設機械の遠隔化・次世代の建機の研究や建機稼働時の各種情報の見える化に取り組んでいます。

コマツみらい建機協働研究所 ~Future vision#1

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コマツみらい建機協働研究所

「“Industry on Campus”wormhole」

大学と会社をつなぐHub

※wormhole:二つの離れた領域を直接結ぶトンネルのような時空構造


2006年7月に全国に先駆けて大阪大学大学院工学研究科に共同研究講座制度が発足してから,あと2年で20年となります。
2024年6月現在,全学での設置件数は共同研究講座・部門は87,協働研究所は24,うち工学研究科は共同研究講座20,協働研究所11となり,全学,工学研究科ともに順調に数を伸ばしています。

制度発足20年の現在,また今後の展望について,企業,大学,社会連携室が鼎談で語り合う企画の第一弾。
今回はコマツみらい建機協働研究所所長である工学研究科機械工学専攻教授 石川将人先生,コマツみらい建機協働研究所副所長 特任教授(常勤)の栗山和也先生,社会連携室特任研究員(常勤)の荒平智子との対談をお送りいたします。

コマツは,大阪大学コマツ共同研究講座(建機等イノベーション講座)を2006年に設置し,2015年にコマツみらい建機協働研究所へ移行しました。本協働研究所は1期が2015年度から5年間,2020年度から2期に入り現在5年目です。

左から栗山和也特任教授(常勤),石川将人教授,荒平智子特任研究員(常勤)

三つ叉、三本足、トリスケリオン

荒平特任研究員(常勤)

今日はよろしくお願いいたします。
石川先生は今年4月からコマツみらい建機協働研究所の所長となられました。
まずは石川先生のご研究についておたずねしたいのですが,今日お話しをお聞きするにあたって改めて先生のWEBサイトを拝見したところタイトルバックに様々な言語で数字の3が書かれていることに気がつきました。
先生にとって数字の3に特別な意味があるのでしょうか?

石川教授

そこに気づいてくれたんですね,ありがとうございます。

私がやっている研究は建設機械から一番遠いところで本来は理論的な研究ばかり。
専門は制御理論,制御工学です。
ロボットを作る研究をはじめからやっていたのではなくて,制御工学の活用としてロボットを作っていました。
その過程で思いついた一番エキセントリックなロボットが三本足の蛇型ロボットで三つ叉蛇,本当にもう思いつきで作ったんです。
数学が好きなので数式の研究をしていたときに,とある方程式があってですね,それの制御の仕方は理論的には分かるのですが実体が何を表すのか,というのは分からない状態。
それで学生さんと色々と議論しているときにふと,これって蛇型ロボットを三本に分岐したらこの方程式になるんじゃないかと気がついて作ってみたんです。

荒平特任研究員(常勤)

一本足の蛇型ロボットはありそうですが,3本足は普通だと思いつかないですね。

石川教授

そうですね。
普通は恐らく三叉状に分岐させようなんて思わないですよね。
純粋に理論から作りました。
これを作ったことによってキャラが立ったといいますか,一時期ひっそりと笑いを取りました(笑)。
受けたので研究室のシンボルマークにしようと思ったんです。
三叉状の蛇型ロボットから派生して三本足の歩行ロボットも作っています。
ロボットを作る際に生き物を参考にすると偶数になるんです,左右対称になるので2か4。
3は数学的発想からこないとまずないですよね。
そういうこともあって3の面白さをしばらく追求していました。

荒平特任研究員(常勤)

そのお話を伺って思い出しましたが,京都に蚕ノ社という神社があってそこに三本柱の鳥居があるんです。

石川教授

そんな鳥居があるんですね。
私のやり方だったらその鳥居も動かせますね。
3って神秘的ですよね。アンナチュラルというか。
3にまつわるトリビアを集めていたんですけど三本の脚を組み合わせたデザインって世界中にいくつかあるんです。
トリスケリオンっていって人類史上もっとも古いシンボルの1つです。
有名なものだとイギリスのマン島のシンボルですね。
3という数字の意味を調べると面白いです。

荒平特任研究員(常勤)

先生の研究室のロゴマーク,3つのTが重なっている素敵なロゴマークですね。
興味深いお話をありがとうございました。

三本足ロボットと油圧ショベル

荒平特任研究員(常勤)

ご研究の制御やロボットに関して,みらい建機との接点はありますか?

石川教授

最初は全くありませんでした。
私はどちらかというと理論だったり科学的好奇心から発していることをやっていたので産学応用的な研究はやっていなかったんです。
10年くらい前から縁があってコマツさんとの共同研究がはじまって研究が二本柱になりました。
研究室の学生さんには,役に立つ研究と役に立たない研究をやっているよ,と言ってます。
役に立たないほうをずっとやってきたんですが,役に立つほうの柱ができたという感じですね。

荒平特任研究員(常勤)

共同研究を通じて研究の幅が広がったんですね。

石川教授

そうですね。
ひとつだけ本当に思いがけない接点があったんです。
さっきお話した三本足の歩行ロボットを作っていた時なんですけど,三本足の歩行の何が面白いかというと自然界の真似ができないことなんです。
二足歩行だったら人間の真似,四足歩行だったら犬の真似ができるけれども三本足は模倣するものが自然界にはないんです。
どうやったら三本足が三本足らしく動くか?
三本足ならではの動きを模索しながらやっていたんですが,その動きを見たコマツの研究員の方がその動きって油圧ショベルと同じですね,と仰ったんです。
どの部分の動きかというと三本足は歩行と言いながら足は動かさず胴体を振って歩くんです。
カメラの三脚と一緒で動かない足の上に錘が載っていて,それをモーターで動かすと揺動が生じて胴体を振って歩くんです。
その動きが油圧ショベルの運動と似ていますね,と。
バケットで掬った土砂を運ぶ動き,大きな錘を振るという状況が必然的に生じるわけですが,それが三本足の錘を振るロボットと同じ状況なんです。
錘を振ると勝手に動いてしまう,止めても揺れによってずれや回転が生じる,その部分で同じ挙動が生じますね,と。
そういう動きで転倒事故が起きたりもするみたいです。
転倒防止の研究ということで繋がりますね。

荒平特任研究員(常勤)

お二人でいらっしゃったから気づけたんですね。

石川教授

私のゴリゴリの役に立たない科学的好奇心のみでやっていた研究を,コマツの研究員の方がそこにいたから気づくことができた。
ただその研究はその後発展はしていないのですが…。
そこが繋がったことは僕にとってはとても面白い経験ですごく気に入っています。

荒平特任研究員(常勤)

ポテンシャルのあるエピソードですね。

オペレーターに学んでオペレーターをこえる

荒平特任研究員(常勤)

この後,2025年に向けてどのようなイメージがおありですか?

石川教授

そうですね,私が建設機械の研究で一番面白いと思っているのがどこかというと,実は建設機械の研究というよりは土砂の研究です。
そこが響いたので今でも楽しく研究しています。
ロボット制御の専門家からすると建設機械の部分はある意味当たり前の機能で,動かし方や基礎理論は分かっているんです。
けれどもその先に土砂がついてまわってくる。
動かす対象は建設機械じゃなくて土砂なんです。
建設機械によって動かされる土砂の研究をやっているんだって思った瞬間にこれは面白い!と感じました。

荒平特任研究員(常勤)

建設機械,ではなくて土砂の動き方に惹かれたんですね。

石川教授

今までやってきた研究は高校物理の延長で力学の方程式をたてて解析できますが,土砂の部分は手に負えない。
手に負えないものをどうやって振る舞いを理解して思い通りにバケットに入れるのか?運ぶのか?
土砂はさらさら,ざらざら,岩みたいなものから湿っていたりといろんな状況があるのでどうやって扱うかというのは純粋にアカデミックな点からも面白い研究対象だと思います。
オペレーターに学んでオペレータ―を超える。
土砂がどういうふうに振る舞ってこのくらいの条件でこう掘ったらこれくらい中に入るか?
経験豊富な方は頭の中で予測していらっしゃいます。
それを自動制御であるとか素人がやるのをアシストする,オペレーターの頭の中にある経験値を引っ張り出して数式にする,そこが面白いところかなと思います。

荒平特任研究員(常勤)

難しい研究対象と思いますが,以前粒子の研究のシミュレーションを見たことがあって,とても面白かったです。

コマツの企業性と大学の学術性

荒平特任研究員(常勤)

次は栗山先生にお話しを伺いたいと思います。
栗山先生がコマツみらい建機協働研究所に特任教授として会社から来られて2年半になりますね。
いろんな課題を感じていらっしゃると思います。

栗山特任教授(常勤)

私は40年近くコマツで働いてきましたので,ガチガチのコマツ文化で育ってきました。
大学に来てからは2年半。コマツ文化で育ってきた目線がなかなか抜けませんが大学目線を少し感じるようになった2年半でした。

荒平特任研究員(常勤)

コマツのWEBサイトでYouTube動画がアップされていて“コンセプトは未来の現場”という動画を拝見しました。
とても興味深かったです。

栗山特任教授(常勤)

コマツの中で未来の建機は?となったとき,YouTubeでの動画のように人々に訴求するような要素と実際開発で動いている世界とではギャップがありますね。
未来を見据えてやっていく,そういう要素も必要だとは思います。
未来っていうのはどんな方向に向かっていくか分からない。
未来の建機でどうやってコマツは勝っていくのか?大きな課題だと思います。
せっかく大学で共同研究をしているので,企業側が考えないような研究をここで進めていくことにも大きな価値があると思っています。
大学に何を期待すればいいのか?は常日頃から考えています。
大学で夢を求める研究を否定する気はないが,産学をやっているコマツの人たちの半分以上は今現在困っていることを助けてほしいと思っています。
大学に望むことはどこなのか?というのは2年半たってもまだ迷うところです。
反省でいうと自分が大学に来てからもコマツ側がすぐ喜んでくれそうなことに重きがいっていて,そこは上手くバランスを取っていきたいと思っています。

荒平特任研究員(常勤)

コマツの企業性と大学の学術性,どうバランスを取るのか難しいですね。
技術で勝ってもビジネスで負けては駄目ですし。
そのあたりのことは各社同じことを課題に感じていると思います。

栗山特任教授(常勤)

そうですね。ここに2年半いますが本当に難しく感じています。
大学の先生の考え方や価値観,企業の考え方や価値観,相容れない部分を尊重できるか?
思考性の違いを受け入れられるか?
お互い理解しあうためにはコミュニケーションが必要ですね。
研究をやっていく中で相互理解を醸成していけるのが一番の理想です。

事業の時間軸

荒平特任研究員(常勤)

石川先生はどう思われますか?

石川教授

そうですね,一緒に研究していく中で接点が見つかったら嬉しいですね。
異分野の人と何か一緒にするとき言葉を合わせるための時間が必要で,最初の数年は会話のプロトコルを合わせるためだけでもいいと思っています。
段々通じるようになるとすごく楽しいです。

栗山特任教授(常勤)

会話が成り立たなくてそこでシュリンクしてしまうケースもありますね。
根本的にこういうことを一緒にやりたいっていうものがあって,我慢の時間があって,という段階が必要ですね。

荒平特任研究員(常勤)

お互いを知るための時間,研究の前段階として必要ですね。

石川教授

時間は絶対に必要ですね。
バックグラウンドが違う人が集まって,さあ1年で成果を出しましょう!となっても焦りや苛立ちが出てきてしまいます。

荒平特任研究員(常勤)

産学連携における研究についてはどのようにお考えですか?

石川教授

大学でアカデミックにやってきたこういう研究の成果が,建設機械のこういう問題に使えます,というように大学での成果を使おう使おうとするのはあまり良くないんじゃないかな,と思っています。
勿論使えるのはいいことですが現場に潜んでいる問題をじっと見て,アカデミックな研究になる種を見つけるときが一番面白いと思うんです。
土砂の挙動が面白いと気づいたとき本当にわくわくしました。
大学にいる人間の心構えとしてはこっちの研究成果をもっていって使おうとするよりは,そこにある問題を抉り出そうというほうが面白いように思います。

栗山特任教授(常勤)

時間の話になってしまいますが事業によって時間軸が違いますね。
薬,化学,鉄,もともとの時間軸が長いもの,短いもの,業種によって様々です。
建設機械は加工されたものを組み立てる,そのための設計技術は必要ですが課題がどうしても近視眼的になりますね。
コマツで基礎研究が受け入れられにくいっていうのは機械メーカーという面ではある意味仕方ない部分もあるのかな,と思います。
薬だったらいい薬を発見すると何年もずっとその薬で儲けがでますが,そんな建設機械はなかなかない。
時間軸が違うのは仕方がないがどの方向にいくのかという議論はやらないといけない。
建設機械メーカーとしてハードウェアを作っているだけでは先細りになってしまうので,使う側の人のサポートをする,コマツではダントツソリューションと言っていますがそこにパワーをかけるのはコマツとしては大きな方向性です。
機械を作ってきた人が大半なので,ソリューションって何?っていう人達が多いと思います。
ソリューションサービス,所謂顧客が抱える問題点を分析,改善するために必要なソフトウェア,ハードウェア,ネットワークをセットにしてシステムを提案・構築できるようにレベルアップを図っている段階です。
大学でやるテーマもそういうところが増えてもいいのかなと思います。

荒平特任研究員(常勤)

新しい事業としてソリューションビジネスが注目されるようになってきていますね。
2025年以降の一つのテーマになりそうですね。

人材の好循環

荒平特任研究員(常勤)

2006年に共同研究講座制度が始まってあと2年で20年,このスパンをどのように考えていらっしゃいますか?

石川教授

私が動きを見ているのはここ10年くらい。
20年もあると世の中の状況も変わるし必要な研究テーマも変わるので20年という時間で生きてくるのは人の育成かなと思います。
一緒に研究をしていて,その後どのようなキャリア形成をしているのか。
実際素晴らしいモデルケースがあります。
共同研究のテーマで卒論や修論を書いて,そのまま就職先もコマツ,そこで出世されて社会人ドクターとして戻ってきたり,共同研究の担当者として戻ってきたり,ということがあります。
人の成長を見られるのが20年ってスパンなのかなと思います。

荒平特任研究員(常勤)

卒業してから20年だと今40代。中堅社員として活躍している年代ですね。

石川教授

大学って規模は大きいけれども大企業と同じような生産能力はないですよね。
モノとか成果そのものには限りがあると思うんです。
大学で生み出せる一番大きなものは人,それが大学や協働研究所の使命なのかな,と思います。
人が育っている実感が感じられます。

荒平特任研究員(常勤)

この制度を考えられた馬場章夫先生が仰っていたのですが,企業人が学内にいる,オンキャンパスにリソースが追加される,そういったことが学生にとっても大切だと思います。

石川教授

そうですね。着実に積み重なるのは人の経験やネットワークですね。
実際に人は育っています。

荒平特任研究員(常勤)

確実に人が育っているというお話が聞けることは大変ありがたいことですね。

石川教授

一大学教員として自分ができることは本当に限られていて,人を育てる,育てるというのは烏滸がましくて人が勝手に育っていくのを邪魔しないというか育つのを少しアシストする,そんな感じです。
大阪大学にいる6年という時間で成長してもらうのを助ける,そこが大学の一番の使命だと感じています。

荒平特任研究員(常勤)

共同研究講座,協働研究所が大学に存在することによって普通に研究室で学ぶよりも企業寄りの発想も生まれやすいでしょうね。

石川教授

Industry on Campus,wormholeのようなものだと思います。

大学→協働研究所 企業とつながっている空間に行くことができる
企業→協働研究所 大学の空気を吸ってもらう
Hubとなっているというか,wormholeとなって会社と大学をつなぐものですよね。
その周辺でウロウロしながら育った学生はアカデミックオンリーな空気だけ吸った学生とは全然違った育ち方をするなと感じます。

荒平特任研究員(常勤)

アカデミックオンリーだけではない。
Industry on Campusを標榜する工学研究科としての特長でもあるし20年近く続いてきた結果ですね。

石川教授

工学研究科としても産学官共創コースがあり,教育制度ともリンクさせようとしています。
そういう新しい教育のスタイルができましたよね。

一貫してずっと続けられるテーマ

荒平特任研究員(常勤)

栗山先生は20年というスパンをどう捉えていらっしゃいますか?

栗山特任教授(常勤)

そうですね,人材育成という面では石川先生が仰るとおりだと思います。
コマツ側としては反省もあります。
一貫してずっと続けられるテーマを最初に企画できなかったという反省です。
ここはコマツが機械メーカーという面もあると思いますし大きなメインターゲットが変わってしまったこともあると思います。
ただ色んな分野の先生と早い段階から様々な共同研究をやっていたので,テーマにヴァリエーションは設定できていたと思います。
この先に向けてはお客様に喜んでコマツの建設機械を使ってもらえるためのいい技術,ドメインはぶれないように今後やっていければと思います。

荒平特任研究員(常勤)

石川先生のお話でもありましたがバックグラウンドの違う人間が集まって一緒にやるということで,言葉を合わせるのに時間がかかるのは仕方ないですし20年間続けられる核となるテーマを設定するのは難しいかもしれませんね。
ただ長年一緒にやってきた中で,企業の中に成果として戻っているものは沢山あるのではないでしょうか。
協働研究所を続けてもらっているのは喜んでもらえているからだと認識しています。

栗山特任教授(常勤)

勿論,企業側としてはいいことをしてもらっているという実感はあります。
ただ,いいことの価値を実現できていないという企業側の問題もありますね。
最初の企画段階でアウトプットをどうするか相談しておくことも大切です。
無形の成果・効果は感じています。
例えば共同研究をして社会実装にまではいかなかったけれどもいい論文は書けた,となったとき,その論文を読んでくれた学生がコマツのことを認識してくれるというのも無形の成果だと思います。

荒平特任研究員(常勤)

無形の成果が見える化できるといいですね。

いろいろなジャンルの人を呼び寄せる題材

石川教授

個人的にコマツさんとの共同研究でありがたいと実感していることがあって,協働研究所が人が集まるHubとしての役割を持っているなということです。
コマツさんは春と秋に成果報告会と中間報告会を実施されているのですが,それに参加するようになって,そこで他学科の先生方と仲良くなる機会をいただけました。
大阪大学の工学研究科ってびっくりするくらい規模が大きいので他専攻の先生とは交流がないんです。しかし報告会に行くと様々な専攻・附属センターの先生方がいらっしゃるので知り合える。
共同研究によって学科間の壁を越えることができるんです。
コマツの方もそうなのではないでしょうか?
他部署の方と知り合える機会ってなかなかないですよね。
報告会で顔を合わせて議論することができる,そういう機会ってすばらしいと思います。
建設機械というものが色んな人を呼び寄せるテーマがある。
私が見ているものとは全く違う角度から建設機械を見ていて,そんなところにも研究テーマがあったのかと驚くこともあります。
建設機械というジャンルが応用の広いものなんだと思います。
自分の専門の学会に行くと制御の人しかいませんが,報告会には様々なジャンルの人がいるので本当に面白いです。

荒平特任研究員(常勤)

年に2回の報告会は有難い機会ですね。
毎回CTOがいらっしゃって,いいコミュニケーションができていると認識しています。
また他大学の先生がお見えになることもありますし。

石川教授

建設機械っていろんなジャンルの人を呼び寄せる非常にいい題材。
産学連携と言っても一対一でやっているところが多くてそんなに広がらないのですが,コマツさんとは工学研究科はじめ附置研含め一丸となって取り組んでいますね。
他大学の先生とも共同研究を通じて知り合えて本当にいいことだと思います。

栗山特任教授(常勤)

阪大での報告会はテーマのヴァリエーションも多いし集まる人数としては一番多いと思います。

産学連携の成果の可視化

荒平特任研究員(常勤)

コマツさんは他大学とも産学連携を活発に行っていらっしゃいますが,他大学の様子をお聞きしてもよろしいでしょうか?

栗山特任教授(常勤)

大学によって特色があると感じています。
地域性もありますね。
また大学の規模も関係していると思います。
こじんまりとしている大学だと横の連携が良くてオペレーションがうまくいっているように聞いています。
大阪大学は大きすぎるのがデメリットに感じる部分もありますね。
ただ,大阪の工場が近くにあるということも関係しているのかな,阪大の卒業生が沢山来てくれるのは嬉しいですね。

荒平特任研究員(常勤)

他大学で設置されている共同研究講座が一同に集まるような機会は持っていらっしゃるのでしょうか?

栗山特任教授(常勤)

年に1度ほどやっています。石川先生にも来ていただいていますが工場見学をしていただいたり,先生方に集まっていただいて意見交換をしていただいたりしています。

荒平特任研究員(常勤)

そういうところで意見交換できると有意義でしょうね。

石川教授

企業と大学がどのように役割分担しているのかを他大学の先生にお聞きできるので参考になりますね。

荒平特任研究員(常勤)

制度発足から20年を前にして,各大学の産学連携の制度をまとめていますが大学によって制度の作り方も違います。
大阪大学は早くに作っているので後から作ったほうが熟度がありますね。
これから先に向けてブラッシュアップさせていきたいと思っています。

栗山特任教授(常勤)

ブラッシュアップと仰ったので一意見ですが,これまでの産学連携での成果を調べることができるようなツールを構築して共有できるといいなと思います。
過去にやってきたことがすぐに引き出せるといいですよね。
他の企業さんとの話の中でも大阪大学との産学連携の成果が見えにくいという話が出ます。

荒平特任研究員(常勤)

先程も無形の成果の話がでましたが見える化が課題ですね。
可視化しにくいものをどうやって可視化するか。

石川教授

大学の人っぽい一方法で言うと,共同研究の成果を学会・学術の世界で発表するというのがありますね。
学術論文の検索ツールは構築されています。
公の研究成果として出していると公の手段で調べることができる,優等生的な答えですけど公的な研究成果にできるだけしていくといいんじゃないかなと思います。

荒平特任研究員(常勤)

いいご意見をいただいたので成果の見える化を今後に向けてやっていけたらと思います。
また皆さまからのご意見をいただく集まりを開いたりもしたいですね。
人材の育成に関しては皆さま感じていらっしゃるので,今後も大切にしていきたいところです。

石川教授

そうですね,繰り返しになりますが人は育っています。
長いスパンで協働研究所を続けてもらっている成果の一つですね。

荒平特任研究員(常勤)

最後に一言ずつお願いします。

実際に人は育っている

石川教授

私自身がアカデミア一辺倒で育ってきたので共同研究という機会を得て,人間として研究者として太くなったと思います。
企業の中にある沢山の問題の中から学術の種を発見できてとてもいい経験ができたと感じています。
ここからはもっと人材育成に注力できるようにしていきたいですね。

Creating value together!

栗山特任教授(常勤)

産学連携,違うDNAの人達が一緒に仕事をするのは時間,エネルギー含めた我慢,あるいは投資と言ってもいいかも,それが必要でその先に成果,実を結ぶことができると実感しています。
我慢努力なしには何も生まれない,お互いの歩み寄りによって初めて単独ではできないことができるような気がします。

荒平特任研究員(常勤)

大変有意義なお話をありがとうございました。

上記対談後も3人での話は盛り上がり石川先生が言語学にご興味のあることがわかりました。
実際、言語学学会にも入会していらっしゃるそうです。
石川先生のWEBサイトにはお話にでてきた三つ叉蛇や三本足のロボットの写真が掲載されています。
是非ご覧ください。

大阪大学大学院工学研究科機械工学専攻 機械動力学領域 石川・南研究室
石川将人 教授

~鼎談を終えて~   –Industry on Campus制度20年- 】
 協働研究所をハブに大学と企業を行き来した学生はアカデミックオンリーの学生とは違った育ち方をすると石川教授。ハブをWormholeと名付けた。異領域をつなぐトンネルのような時空構造だ。
 コマツ共同研究講座(現・協働研究所)は2007年以降,機械工学専攻の協力講座として学生を受入れ38名を送り出した。内入社した学生は13名,中には招へい研究員として同じ研究を続け,大学に戻って社会人ドクターとして博士号を取得したOBがいる。なおこの際にはコマツの社員向け社会人ドクター取得制度を活用した。
 共同研究講座制度は学内に外部社会を持ち込むことで教育力への効果も期待した。Wormholeを経験した学生が現実の企業と大学を行き来して活躍している。本制度は「on Campus」にこだわって作られた。実際に人は育った。

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