工学研究科の窓 こぼれ話 Vol. 13
ノーベル賞・北川教授が高野山で講演


◆ノーベル賞・北川進教授が高野山講演で「CO2を悪者にする風潮」をただす
ノーベル化学賞を昨年受賞した北川進・京都大学理事・副学長が8月1日、 高野山で講演をされ、「CO2を悪者にする風潮」に異論を唱えられました。 聴衆の一人として参加していた私は「あれっ、どこかで聞いた話」と思ったら、工学研究科社会連携室長で有機工業化学を専門とする安田誠教授が、 日ごろから同様のことをおっしゃっていたのでした。 社会連携室HP「室長の部屋」のコラム「“脱炭素”という言葉への違和感」を改めて読み返しました。 「炭素Cは生命体を形造る基本元素であり、炭素資源はナフサを経てさまざまな化学製品の原料となる。また、酸素O2との反応でエネルギーを生み出し、動力、電力、熱源となる。さらに金属酸化物の還元に利用され、製錬に使われる。炭素資源が無ければ、橋もビルもクルマもできない」ことを知り、「炭素Cのスーパースターぶり」を再認識しました。= “脱炭素”という言葉への違和感|トピックス|大阪大学大学院工学研究科 社会連携室 好奇心を持ち続ける意義 / Importance of developing curiosity | Makoto Yasuda | TEDxOsakaU
◆荘子「無用の用」を引用しながら「人類最大の『宝探し』」
今年第100回を迎えた「高野山夏季大学」では、宿坊に2泊3日泊まりながらそうそうたる講師8人の講演を聴きました。その第2日で「空にして満つ―動く結晶と『無常』の科学―」と題して講演した北川教授は、炭素について「800㌘のパンを作るのに、肥料や製造過程で多くのエネルギーを使っていて、それによって出るCO2は0.6㌔、1㍑ペットボトル327本分にあたります。CO2は、人間の営みで発生するものなのです。CO2を悪者にせず、大事な原料であることを認識してほしいです」と呼びかけました。
ノーベル賞につながった多孔性金属錯体(MOF)は、配布されたパンフレットによると、貯蔵、分離、返還できる機能を持ち、「二酸化炭素など不要とされてきたものを大気から取り出し再び活かす技術として、持続可能な未来を支える可能性を秘めています」と記されています。
講演でその研究発想のきっかけとして北川教授は「荘子は『無用の用』を提唱。これをもとに湯川秀樹先生は『何もないことから必要なものを作る』ことを説かれた」ことを挙げました。そして研究成果の将来に向け「空気はただの背景ではない。空気を活用して資源に変えていく。空からCO2を探し出すことは、人類最大の『宝探し』です」と示しました。またノーベル賞授賞式のエピソードとして「4時間ディナーでは、3皿の料理が出たのみ。トイレに立つこともできず、ワインをたっぷり飲めなかった」と言って、笑いを誘いました。

◆石破前首相、きたやまおさむさんなど、そうそうたる講師陣
このほかの講師の一部講演をご紹介します。
<石破茂前首相>先輩政治家から教えられたのは「政治家は、勇気と真心と真実を語れ」。安全保障政策について力を込め、田中角栄元首相の言葉として「あの戦争に行った者が国の中枢にいる間は大丈夫。それらが中枢から離れた時、この国は危ない」と紹介しました。
<音楽家で精神科医きたやまおさむさん>最後にスライドで「あの素晴らしい愛をもう一度」の歌詞をエンディングロールさせ、 「肩を並べていた者同士、 愛が消えていく、 土にかえる。 人生はきれいなこと、 汚いことが混ざりあっている」と結んだ言葉が感動的でした。
<同時通訳者の田中慶子さん>京都のお寺で「合掌」を英訳する時、 単に手を合わせるだけでなく、 「私は今日を大事にして、 精一杯全力を尽くすと誓うこと」と教えられたそうです。(社会連携室・嶋谷泰典)


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