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工学研究科の窓 研究探訪 Vol. 9
 「ミジンコの生き抜き方」を記者発表

ミジンコの生存戦略を紹介する加藤准教授

◆加藤准教授が「“湖沼のヒロイン”ミジンコの生き抜き方」を記者会見

 大阪大学の工学研究科と産業科学研究所が最新の研究成果などをマスコミ発表する「合同定例記者会見」が9月14日、 中之島センターで開催され、 工学研究科からは生物工学専攻の加藤泰彦准教授が「“湖沼のヒロイン”ミジンコは環境変化をいかに生き抜くのか?―環境に応じた生存戦略を分子の言葉で読み解くー」と題して発表しました。

 加藤准教授は、 ミジンコが湖沼で植物プランクトンを食べ、 魚などの餌となることで食物網をつなぐ重要な役割を担っていることを紹介。また、 ミジンコは通常、 メスがメスだけを産む「メスだけの社会」を作って効率よく増えていることから、 二つの意味を込めてミジンコを「湖沼のヒロイン」と位置づけました。
 ところが、「エサ不足や個体密度の上昇などによって環境の悪化を察知すると、ミジンコは生殖戦略を大きく変える」と言います。すなわち、 普段メスだけを産んでいた母親がオスを産むようになる一方、 メス側も休眠卵を作る生殖様式へと切り替わり、 オスとの交配・受精によって、 厳しい環境をやり過ごす休眠卵を残すのです。

◆「なぜ、必要な時だけオスを産めるのか」など3つの問い

 こうした生存戦略について、 発表のなかで「3つの問い」として「なぜ、 必要な時だけオスを産めるのか」「なぜ、休眠卵は不用意に目覚めないのか」「何が、 有性生殖への切り替わりやすさを決めるのか」を挙げました。

 これらの問いを分子レベルから調べるため、加藤准教授らは、ミジンコの卵への顕微注入技術を開発しました。ミジンコの卵は柔らかく、 針を刺すと破裂しやすいため、 遺伝子の働きを個体で直接調べることが技術的に困難でした。この方法によって、 遺伝子の働きを止めたり、 蛍光で可視化することが可能となり、 環境応答の仕組みを分子レベルから解析できことになったといいます。
 次に、 顕微注入技術を用いて明らかにした「母親が環境変化を読み取り、 必要な時にだけ次世代でオスを決める遺伝子を働かせる分子機構」について紹介しました。

◆目覚めを防ぐ「分子のブレーキ」を解明

 続いて、「こうして生まれたオスとの有性生殖によって作られる休眠卵について、 孵化後の生存に適さない時期に不用意に目覚めることを防ぐ『分子のブレーキ』として働く内部状態」を説明しました。
 さらに、 メスだけで増える単為生殖から有性生殖への切り替わりやすさを制御するRNA結合タンパク質を同定した研究についても紹介しました。 このタンパク質の機能を失ったミジンコでは、オスや休眠卵を作りやすくなるなど、 生殖戦略に変化が見られます。
 これまでの個体・個体群レベルの研究では、 競争に弱い系統が、 排除される前に休眠卵を作って水中の競争の場から一時的に退避することで、 長期的に系統を残すことが報告されています。 今後の研究展望として「今回紹介した有性生殖の分子制御が、 この生態学的な生存戦略とどのようにつながりうるか」を追求していくということです。

◆巧みな生き方を「知って利用」する研究展望

 発表の最後には、ミジンコの巧みな生き方を「知って納得」するだけでなく、得られた知見を「知って利用」する研究への展望も紹介しました。化学物質が生殖に及ぼす影響をその作用機構から評価することや、 湖底に眠る休眠卵から過去のミジンコを復元すること、 環境変化の中でどの系統が増え、 休眠し、 残るのかを予測することなどを通じ、 より的確な環境影響評価や生物多様性の保全につなげていくことを目指しています。
 質疑応答も行い、 記者たちから「オスとメスの遺伝子は?」「有性生殖の意義は?」「共通の性質を持つ生物は他にもあるのか?」「休眠卵はどれくらい長く眠るのか?」「今後はどんな研究を進めていくのか」など多くの質問が寄せられました。

谷口教授の発表にも、 記者たちが聴き入りました

◆谷口産研教授が「国産初の『ペプチドシークエンサー』」実用化へ

 一方、産研からは谷口正輝教授が「国産初の『ペプチドシークエンサー』、 年度内に医療機関への先行開始・事業化フェーズへ」と題して発表しました。
 病気の「サイン」やがん細胞が持つ「目印」は、体内のごくわずかなペプチドに刻まれていますが、それをDNAのように増やして調べることができません。谷口教授は、わずか1分子のペプチドからアミノ酸配列を読み取る「ペプチドシークエンサー」を開発し、医療現場での実用化に近づいているということです。(社会連携室・嶋谷泰典)

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アドレス=shimatani@liaison.eng.osaka-u.ac.jp

 

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